「あれ、臭くない」 「本当だ、不思議だ」 気温30度を超した5月下旬の昼下がり。田畑が広がる東与賀下飯盛の農家の牛舎前で、視察に来ていた江北町の職員や住民ら約50人が驚きの声を上げた。

 案内役の佐賀市職員が説明する。「こんな暑い日は普通は牛ふんのいおいが強烈なはず。『あの水』が消したんです」

 「あの水」とは、佐賀市が同市西与賀町に00年に建設した農業集落排水処理施設「誠水場」の処理水だ。下水を1日に20トン処理する。4月、その処理水が市販の「EM」(有用微生物群)に近い内容で、強力な発酵作用によって土壌改善や水質浄化に役立つことが判明した。市は無料で配り始め、毎週金曜日の早朝、口コミで聞き付けた農家の人らが大勢もらいに訪れる。

 視察を受けた牛舎の所有者、弥富豊さん(38)は「誠水場は下水場じゃなか。菌ば産む製造工場ばい」と話す。約1キロ離れた誠水場に通い、毎週500リットルもらう。40頭いる牛舎の隅々にまき、牛ふんにかけて堆肥も作る。長年、近所迷惑になる牛舎の悪臭に悩んでいたという。牛舎の内部まで入り込めば、やはり多少はにおうが、外に出ればほとんどにおわない。

 現在、農家など110世帯が処理水を利用。
農水省農村整備課は「処理施設の珍しい活用法だが住民に役立っている。全国に周知することも考えたい」と評価する。

 下水道処理場を「菌の工場」に変えたのは、市農村環境課の前田純二課長(52)のグループ。微生物による生物分解で生活排水を処理する仕組みに着目した。役目を終えて用済みになった微生物を無駄に排水するのではなく、リサイクルしようと思いついたのだ。複数の菌をEMのように土壌改善に効果を発揮するようなバランスに整えて増やすため、有用菌を大量に含む有明海の潟土を微生物培養槽に入れたり、空気注入に工夫をこらしたりした。その結果、施設から悪臭がしなくなったことなどから市は調査機関・財団法人日本食品分析センターに調査を依頼。乳酸菌や放線菌、光合成細菌など7種類の有用菌が確認された。

 「高い費用(4億6千万円)で造った施設。下水処理以外の役割でも住民に喜んでもらいたかった」と前田副課長。有明海沿岸で育ち、近年の異変に強い関心があるという前田副課長の助言で、処理水を使い有明海の環境改善を試みるグループも現れた。

 下水から「宝の水」が生まれた「誠水場」の挑戦。広がりつつある利用の現場を訪ねた。

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朝日新聞佐賀版 下水から宝の水 佐賀市「誠水場」の挑戦

平成14年6月28日

200901

AQUA Green Soil Co., Ltd.

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